episode 16 胎内
1944 〔第二次世界大戦中)IN THE WOMB
1944年から1945年にかけての約10月を私は母親の胎内にいました。つまり第二次世界大戦末期の人類が憎しみ合い殺し合い、はてもない屍を大地に大海に返し続けていた最中の事です。そして私が生まれた数ヵ月後には人類始まって以来初の核の投下が広島、長崎にアメリカによって断行されました。信じがたい相争う殺戮、叫喚、血塗られた人類の汚濁、その怨念、天空を覆い隠すほどの事だったでしょう。

愚かなり人類。


そう断じるしかない現実だったと思います。





1991年の私の航海を呪った彼女の言によれば、私には海で死んだたくさんの人たちの霊が取り付いているから航海に出たなら必ずこれ等の霊によってわたしは深い海の底に引きずり込まれるだろうと。もしそうだったのなら、これ等霊たちの怨念は私が母親の胎内にいたときにすでに育まれていたと考えるのが素直かもしれません。
そして2000年アメリカは私に非常に不愉快なかたちで宣戦布告をパーフェクトストームによってしました。その翌年偶然にも、まったく2発の核(私が生まれた年に長崎広島に投下された原爆)の裏返しのようにして私が始めて自分の絵を世に問うたあのNY ワールドトレードセンターに飛行機が突入しました。
我々は血塗られた歴史の延長線上にしか存在しえないのかもしれません。
また、私はここに私の出生の秘密も明かさなくてはなりません。なぜならば、その線上にしか私の結婚生活が存在しえないということを2006年現在に思い知らされているからです。